紅龍 ―2―
「ふっ。俺は二ノ宮 恭平(ニノミヤ キョウヘイ)だ。」
あの御方、及び恭平は頭を掻きながらそう言った。
頭を掻いているのは恭平の癖。自分の名を口にする時の。
「にのみや―…?どっかで…。」
龍も頭を掻きながら何かを呟いている。
きっと龍の場合は思い出す時にだろう。
まぁ。龍は思い出せないだろうけど。
でも、結真と晃人。そして何故か笹木さんも恭平が誰かって事をもう分かってる。
でも口に出さないのは、二ノ宮恭平と言う名の重さを知っているから。
いや、正確に言えば、“二ノ宮”の名だ。
皆、青い顔をしている。
まぁ、恭平はその位の人だからしょうがない。
名前だけでも知っている人は距離を持つ。
そして、
「恭平。」
「ん?」
「これ以上の話は「分かってる。」
恭平は自分の名前の重さを知っていて口に出す。
まるで人を試すかのように。