紅龍 ―2―
「…―うん。」
「恭平。」
「うん。」
「きょうへ…い。」
最後にもう一度、名前を言おうとすれば恭平から抱き寄せられる。
「恭平?」
顔は上げられないからそのままの状態で問い掛ける。
「俺を…」
「ん。」
「俺の事を恭平って言うのはもう蘭しか居ない。」
恭平の腕の力が少し強くなるのを感じながら、あぁ。そうかと落ち着いている自分がいた。
「俺の事を皆は「恭平。」
泣きそうな声を出す恭平を征する。
「恭平は恭平だから。」
少し緩んだ腕から抜け出して恭平の顔を見ると、恭平は今にも消えてしまいそうな…そんな感じをしていた。
「恭平は二ノ宮じゃない。“二ノ宮恭平”だから。恭平―…だから。」
恭平はきっと二ノ宮の名を重く感じてる。
大き過ぎるその二ノ宮の名を。