紅龍 ―2―
「蘭。」
「…―ん、何?」
恭平の声で現実に戻される。
いけない。
さっき私―…
「自分を犠牲にするな。」
“それならこの命もいらない”って…
「…―それは誰も望まない。」
恭平の瞳が私を逃がさないと言っている。
逃げるなと言っている。
でも、
もしもの事があれば―…
「…―っ。蘭!!だから分からないわけ!?蘭が自分自身を犠牲にする事なんて誰も望んでない。ただ仲間を泣かせるだけだ。」
険しい顔を戻さない私を見て考えている事が分かったのか、恭平の大きな声が静かな部屋に響いた。