紅龍 ―2―


「―――……。」



言葉が出てこない。


ただ、「大丈夫。」と言えばいいのに。




どうしたんだろう私。




「蘭は間違ってる。蘭が自分自身を犠牲にして、みんなは助かるかもしれない。けど、笑顔は守れない。

その後、蘭が居なくなってみんなはどうすんの?俺は―…どうすりゃいいわけ?」





泣きそうな声で気持ちを伝える恭平。


私は何て言葉を言えばいい?



震える手をもう片方の手で押さえつけながら考える。



「恭平。」





でも、今の私には名前を呼ぶしかできない。





「蘭。あの計画は実行するといい。でもそれがもし、失敗となったとして自分を犠牲にするのは俺が許さない。

俺を残していくな。


その時は蘭もその仲間も、俺が助けるから。」





「…―恭平。」




「だから自分を犠牲になんてするな。俺を「恭平。」






恭平の言葉を名前で遮る。




「ありがとう。もう大丈夫だから。…―私は恭平を残してなんか行かない。」






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