紅龍 ―2―
「蘭。」
目を開ければ隼人が携帯を私に向ける。
その携帯を耳に近づけば兄貴の声が聞こえた。
「蘭―…。」
その兄貴の声には恭平と同じ気持ちがこもっている。
でもあえて気付かない振り。
気付いてはいけない気がする。
「夜7時に―…。」
「あぁ。」
「これが最後。紅花として―…後悔はしないよ。」
「あぁ。」
「私は皆に支えられてる。」
「そうだな。」
「ありがとう―…本当に。」
「あぁ。分かった。」
主語のない会話。
だって主語なんて必要ない。
気持ちで会話できるもんだから。
大きく深呼吸する。
何だろうこの気持ちは―…
「待ってる。」
そんな言葉が聞こえて携帯は切れた。