紅龍 ―2―
『今日は聖なる夜だ―…』
電話口がら聞こえるあの人の声はあの時と同じ冷たい声だった。
『龍。約束の時間が来ている。…―分かっているだろ?』
何の感情もこもっていない言葉に泣きたい衝動にかられる。
でも今泣いたら可笑しい。
『龍―…』
「分かってる。…―逃げないから××××で待ってて下さい。」
俺は震える手を無理やりもう片方の手で押さえ込んだ。
皆に気付かれたくない。
「約束は―…守ります。…………――でわ。」
俺は静かに携帯を閉じた。
「ごめん皆―…。」
そう言ってみても誰も気付かない。
俺は小さな1人の人間―…
俺は足を智さんの方に運んだ。