紅龍 ―2―
「君たち。大丈夫かい?」
さっきまでとは違う優しい男の声が響いた。
「………だ…い…じょう、ぶ…です。……―それ、より何で…あな…たが……こんな…ところに?」
足や腕から血を流す智さんが消えそうな声で言った。
実際、喋る気力もないはずの智さん。
でも智さんは男の目をしっかり見ながら話していた。
この人は一体だれ―…?
「ふっ。君は俺を知っているようだな。……それより君はあまり喋らないほうがいい。身体に響くよ。それと…………
ちょっとすまない。」
男の携帯が鳴った。男は断りを入れて電話に出た。
「あぁ……俺だ。……あ"?分かってる。それはしなくていい。
俺が出たからもう手も出せまい。
それより病院に電話をいれとけ。……いや、俺ではない。……ああ。」
短い電話だった。
「……君。少し時間がいるか?」
携帯をポケットに戻した男は智さんと目で会話をすると「分かった。」とだけ言ってどこかに行った。
あの人は何なんだろう。
俺はその男の背中を見つめるだけだった。