素直の方が好きですか?


「前カレだよ」

「そ―…」

葉月はそれ以上は聞いてこなかった。
案外、鋭いから察したのかもしれない。

「ねぇ今度は一緒に翔ちゃん家行こうよ」

「は?やだよ今更――…」

「そっか……」

葉月も一緒に行けば楽しいと思ったんだけどな…。

「帰るか」

葉月―――……。

何かが…変わろうとしてる

彼の中の、何かが。

こうして彼はきっと大人になっていくんだ。アンタなら立派な人間になるよ。

あたしも変わらなくちゃ…
早く前に進まなきゃ……。

葉月を守れるくらい強くならなきゃ…。

早く、早く大人になるんだ。
そしたらお母さんもお父さんもずっと楽になるし…

あたしが変わらなきゃ…ダメなんだ。
誰よりも……。

「葉月……」

「ん?」

「ごめんね」

「は?」

「ううん、なんでもない」

勉強頑張っていい大学行っていい会社就職するんだ。
家族の為に――…。

あたしが頑張らないで誰が頑張る。

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