素直の方が好きですか?


いや、確かにあの頃、俺たちは若かった。
だから何度だってやり直せた。

そんなこと考える俺はオッサンか?
年ってやだな。

「想ちゃん?」

「え?」

「どうかしたぁ?ずぅっとボーッとしてるのぉ……心配だよぉ、りぃちゃんがぁ」

「椎じゃないのかよ!」

「うん、だってぇりぃちゃんがぁ」

「もうわかったから!それ以上はヤメテ!」

「ごめんな」

「は?」

「ごめん」


刹那。
視界の端に何かを捉えた。

何か、を。

反射的に体が動いた。
走っていた。

ソレを追いかけて。


その時、黒髪の少女……いや女の人が行き手を阻んだ。

「な!」

「これ以上先は行かせられない」

透き通るような声の主は強い眼差しで俺を睨み付けた。

「通せ!」

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