素直の方が好きですか?


「あなたにここを通る資格はないわ」

「茜!」

かつて俺を苦しめていたコイツはそんな面影なかった。

「嫌よ。智葉ちゃんを傷つける人は許さない!私の恩人を傷つけるのなら誰だって容赦しない!」

「変わったな、お前」

「今はそんな話……」

茜の警戒が少し緩んだすきに横をすり抜けた。
少しセコいかもしれないが今の俺は、正攻法なんて知らない。

「智葉!智葉!!」

若干伸びた髪に化粧の施された顔。
だけどアレは間違いなく智葉だった。

「やだ!」

「え」

「来ないで!」

「待てよ!」

追いついた俺は腕を掴んだ。

「嫌っ」

俺を待っていたのは拒絶か?

「智葉……」

「あ……」

離れていく俺の手に焦ったように眉間に皺を寄せた智葉。

そんな顔すんなよ。

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