工場スクラップブック
しかし、
こんなところでよく働いていけるものだ。

防空壕だからアーチ状をした通路だ。

びっしりと赤レンガが積まれている。

そもそもそういう造りだから通路も狭い。

足元は水溜りがひどく歩く度に
ピシャピシャと音を立てている。

それにしても
この迷路のような通路の奥で一体何をしているんだろうか?

太陽の光も届かないもぐらのような生活ではないか。

しかも電球は照明というより常夜灯に近い。

やがて印刷機を回転させている音がかすかに聞こえてきた。

そして数人の男女が小さな印刷機の周りで黙々と仕事をしていた。

責任者らしき男が印刷工場の社長と抱き合いながら握手していた。


「やあどうもどうも。ここの会社の社長です」


「担当者君どういうこと?」


「わかりません。ちょっと聞いてみます」


しばらく担当者君と印刷会社社長が話をしていた。
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