それでも好きだった
これはあれですか、強制ですか。
私の意見は無視ですか…。
「はぁ~」
ため息をつき、行く準備をする。
ポケットに定期と音楽プレーヤーを入れ、手には先ほどお母さんから預かった紙袋を持ち、家を出た。
駅に着き、電車に乗り込む。
微妙な時間帯で電車の中はガラガラ。
椅子に座り、音楽を聴きながら着くのを待つ。
今日は彼に会わないことを願う。
会ってしまうと、余計に考え込んでしまう。
電車を降り、周りを見渡す。
どうやら彼はいないらしい。
ホッと安心したのと、少し残念な気持ちになった。
ゆっくりおばあちゃん家に向かう。
向かう途中であることに気付く。
「…ケータイ忘れた」
家に置いて来てしまったみたいだ。
今時の子とは思えない忘れ物。
必需品だというのにすっかり忘れていた。
ホントありえない。
まぁおばあちゃんにこれを渡して帰るだけだからなんとかなるか。
私は持っていた紙袋を見てそう思った。