それでも好きだった
いつの間にか、辺りは薄暗くなっていた。
いつもの慣れた道を歩く。
少しずつ星の光が見えてきた。
さっきまで重かった頭が、少しだけ軽くなって気分がよかった。
虫の鳴く声が聞こえてくる。
もうそろそろ夏が来る。
今年の夏はどんな夏になるんだろう。
今からワクワクしてきた。
駅に着くと、すでに電車が来ていた。
出発する音がホームに響く。
私は急いでその電車に乗り込もうとしたときだった。
誰かが私の腕を思いっきり引っ張った。
その所為で私の目の前でドアが閉まる。
そして発車してしまった。
私はただ呆然と前を見ていた。
一体何が起こったんだ?
頭上から息がかかる。
振り返るとやっぱりと言うのか、私の腕を掴んできたのは、何故か汗だくの岡田君の姿だった。