それでも好きだった
乱した呼吸を落ち着かせている。
どうやら走ってきたようだ。
何をそんなに急いでいたんだろうか。
それより、電車に乗り遅れてしまった。
頭の中で冷静に考えていた。
「あ…あぶねぇ」
そう言って岡田君は汗を袖で拭いていた。
片方の手はまだ私の腕を掴んでいた。
心臓がうるさい。
彼に聞こえそうだ。
「…あの腕」
ドキドキしている所為かうまくしゃべれない。
でも伝わったらしく、彼は急いで掴んでいた手を離した。
二人の間に沈黙が続く。
彼の行動は一体なんだ?
いきなり腕を掴んできたと思ったら何も言わないし、よくわからない。