それでも好きだった
私はその空気に耐えられず、何か話題はないかと考えた。
「…紗月は?」
出てきたのはやっぱり紗月のこと。
今の私にとって彼との関係は紗月が間にいて成り立つ。
「送ってきたところ」
彼は下を向いたまましゃべった。
「そっか」
もう話題がなくなってしまった。
彼は相変わらず黙ったまま。
いつもなら彼がよく話しかけてくれるのに、肝心な彼が黙りっぱなし。
「…帰らなくていいの?」
何もないのなら帰ったほうがいい。
もう辺りも暗くなってきたし、ここにいても何も変わらない。
しかも今日の彼はいつもと違う。
それに私自身もいっぱいいっぱいだ。
そんな事を含めて、帰ったほうがいいと思った。
「昨日さ…」
ずっと黙っていた彼がゆっくりと話し出した。