それでも好きだった
「あ!翔~!!」
そう言って紗月は走って行った。
前を見ると、岡田君と聡君が並んで歩いていた。
紗月は勢いよく岡田君に抱きつく。
その姿を見て痛む胸。
なんで痛んだりするんだよ。
自分が嫌になる。
「華夜ちゃん」
名前を呼ばれ、前を見る。
三人が私のほうを向く。
どうも気まずい空気。
紗月はニコニコと笑っている。
「…おはよ」
私は顔を下に向き、小さい声で言った。
「うん、おはよう」
聡君は少し微笑んでいるような気がした。
いつもの優しい声で返してくれたからだ。
「ほら、翔も何黙ってるの?」
紗月が岡田君に言う。
今は入らない気遣い。