それでも好きだった
私は聡君に言われたとおり、屋上にやってきた。
屋上の扉を開くとすでに聡君がいた。
私はゆっくり聡君に近付く。
「…来てくれたんだ」
「うん…」
聡君は私のほうを見ようとはしなかった。
私は聡君の位置から三歩下がったところで立ち止まった。
私を呼び出したのはこの前の返事の事だろうか。
だとしたら、どう答えればいいかわからない。
昨日の事もあるし、私の気持ちはちゃんと決まっていない。
今の私はすごく不安定なんだ。
だから、もしその事を聞かれても何も答えられない。
「呼んだのはさ、この前の返事の事じゃないんだ」
私の思っていることが分かったのか、聡君は言った。
「少し聞きたいことがあって…」
「…何?」
聞きたいことってなんだろう。
でも、呼び出したのが返事の答えじゃないと分かって少しほっとした。
「何かあった?…翔と」