それでも好きだった
「でもあれだね。どこの誰だか分からないんじゃなぁ…」
紗月の言うとおりだ。
好きだと分かったのに、肝心の彼がどこの誰だか分からない。
でも私はそれでもよかった。
またどこかで会えればそれだけでよかったんだ。
それを紗月に言ったら、
「それじゃ好きになった意味ないじゃん!」
…って怒られた。
でもさ、その方が楽しいと思うのは私だけなのだろうか。
向こうは私の名前を知っていて私は知らない。
不思議な関係だけど、なんか悪くはない。
「いいの!それに今は受験が一番」
「今時の女子が言うことじゃないよ、そのセリフ!」
「現実を見ろって事だよ!」
「華夜が言うならそれでいいけどさぁ」
それでもブツブツ言ってる紗月。
この子は本当に友達思い。
そんなところも好き。