それでも好きだった
私は少し深呼吸をして紗月に言った。
「…付き合うことになった」
「え!?」
かなり驚いている紗月。
大きな瞳がさらに大きくなった。
「聡君と付き合うことになった」
「…嘘~!?」
大きな声で言った紗月は、すかさず私に抱きついてきた。
「本当に!?」
「うん」
「やったー!おめでとう!」
自分の事のように喜んでくれた彼女。
少し罪悪感を感じる。
今の私はまだ本気で聡君を好きなったわけじゃない。
“彼”を忘れるために利用してしまった事は言えない。
でも、喜んでくれている彼女のためにも早く“彼”への気持ちを消したい。
そして、聡君を好きになりたい。
これは嘘でもない。
本当の気持ち。