それでも好きだった
「これで文句ないでしょ」
そう言って紗月を見た。
彼女は嬉しそうに浮き輪を私に渡してくる。
横にいた聡君を見た。
なぜか顔が…真っ赤に?
岡田君は目を逸らしていた。
「どうかした?」
私が聡君に問いかけるとハッとした顔で何でもないと言った。
一体なんだったんだ?
「…じゃあ華夜、泳ぎに行こう!」
私の腕を掴んで連れて行こうとする紗月。
「翔たちも準備ができたら来てね」
そう言って連れて行かれた。
そして何故か紗月の表情が悲しそうに思えた。
それは見間違えかどうか分からなかった。
だって、その表情はたった一瞬だったからだ。