それでも好きだった
中島君がそう言った瞬間、私は誰かに引っ張られた。
「うわっ!」
引っ張ったのは…何故か岡田君だった。
「…これ、俺のだから」
そう言って私を立たせ、腕を引っ張りながら歩く岡田君。
何が起こっているのか分からない。
私と同じく、中島君もポカーンと口を開けていた。
「あ…木下、また同窓会しようぜ」
中島君は手を振りながらそう言って逃げるように走って行った。
そしていまだに岡田君腕を掴まれ歩いている。
彼は一体何がしたいのだろう。
思わせぶりな行動はやめてほしい。
『…これ、俺のだから』
その言葉が私の頭に響いたまま。
岡田君には紗月がいる。
私には聡君がいる。
なのにどうしてそんな事を言うの。
冗談だとしても、その言葉で私はドキッとしてしまう。
完璧に忘れていない彼への想いが再び溢れそうになる。