それでも好きだった
私は彼の後ろについて行った。
ただ夜道を歩いているだけ。
私も岡田君も何も話さない。
蝉や犬の鳴き声が聞こえるだけ。
「…聡と別れたってホント?」
一歩前を歩く彼はこちらを向かず、私に話し掛けて来た。
その質問には少し驚いた。
でもすぐに理解できたのは、聡君と岡田君が親友であることを知っているから。
きっと聡君から聞いたのだろう。
「うん…」
「…そっか」
それ以上何も聞いてこなかった。
また沈黙が続く。
一体彼は何があったのだろうか。
聞きたいけど、聞いちゃいけない気がして何も聞けない。
近くにいるのにやっぱり遠い。
彼の近くにはいつも紗月がいるから。
その存在は大きかった。
敵わないなって改めて思った。
それでも好きでいるって誓ったのは私。
自分に正直になるって決めたんだ。