それでも好きだった
そういえば、あれから彼に会っていない。
あの人はどこの高校に受かったんだろうか。
私も何してんだろう。
ちゃんと聞いてこればよかった。
「あ!翔!」
おーい!と呼んでいる紗月。
入学式早々、紗月の彼氏とご対面か。
翔と呼ばれた彼氏さん。
「おぉ!」
…なんでだろう、聞いたことある声だ。
いや、それはない。
ないと思いたい。
ゆっくり振り返る。
こっち向かって歩いてくる一人の男子。
…誰か、嘘だと言って。
会えたのが嬉しいはずなのに、とても辛い。
すごく後悔した。
なんでもっと早く、いろんなことを聞かなかったんだろう。
今さら分かっても遅い。
それだけは絶対ないと思っていたのに…。
そう、紗月の彼氏は…少なくとも私が恋心を抱いていた彼だった。