それでも好きだった
「華夜、大人っぽいでしょ!?」
「あ…あぁ」
「何?どうしたの?」
「…なんでもねぇよ」
彼はそう言って紗月の頭を撫でていた。
諦めないとダメじゃん。
こんな幸せそうな紗月の姿を見て思った。
壊してはいけない壁。
壊してはいけない絆。
この気持ちもすべて知らないフリ。
これが一番いい案なんだ。
「…ねぇ紗月」
「どうしたの、華夜?」
「HR…遅れちゃう」
「そうだった!じゃあ翔、また後でね!」
紗月は彼に抱きついていた。
私はそれを見てられなかった。
彼に一礼して、教室に向かうことにした。
教室に着くまで、紗月がいろいろ話しかけていたみたいだったけど、私の耳には届いていなかった。