それでも好きだった
なんでって、変に思われるじゃんか。
知り合って間もないのに、いきなり呼び捨てじゃ紗月も何かと思うし…。
変に誤解されたくない。
「……」
かと言って、なんて彼に言えばいいか分からない。
こっちの都合なんて分からないし…。
「…わかった」
「え?」
「その代わり、二人のときはいつも通りに呼ぶから」
「うん、ありがとう!」
私は微笑んだ。
よかった。
深く聞いてこなくて。
「…なんか…――」
「へ?」
「いや、なんでもない」
なんて言ったのか聞こえなかった。
それも、電車が来たから。
電車の音で聞き取れなかった。