それでも好きだった
「北山君は?」
「いや、俺が一緒に帰ろうって誘ったんだ」
なんだ、あんたが原因だったのか。
ちょっと恨む。
この人もよくカップルと帰ろうとか言えたな。
自分だったら絶対にしないけど…。
前の二人は楽しそうに話していた。
その姿さえ見るのが嫌になる。
自分の中で変なモヤモヤがある。
「今、思ったんだけどさ…」
もしかして、顔に出てた!?
だったらヤバイ。
目を瞑って、次の言葉を待つ。
「名前…」
「へ?」
「名前で呼んでいいかな?」
…そんなこと?
てっきりバレたかと思った。
一気に緊張が解けた。
「名前くらいお好きにどうぞ」
そんなの一々聞かなくてもいいのに。