それでも好きだった
岡田君だってそんなこと聞かずに、呼び捨てしちゃってるしさ…名前くらいなんだっていい。
「じゃあまずは華夜ちゃんで!」
“まずは”ってなんだろう。
ちゃん付けは恥ずかしいけど、まぁいいとしよう。
「俺も名前で呼んでよ!」
また急だな…。
あれ?下の名前なんだっけ?
すっかり忘れてしまった。
失礼にもほどがある。
「もしかして…忘れた?」
黙って頷く。
本当にごめんなさい。
「あはは!俺、聡ね!」
「聡…君」
「うん!今はそれでよし!」
なんだか恥ずかしいけど、聡君は嬉しそうだったからそれでよかったんだろう。
“今は”って言葉が気になるが、あまり考えないようにした。
そしてふと、気がついた。
「駅と方向違う…」
「そうだよ?」
え、どういう事?
帰るんじゃなかったの?