それでも好きだった
「どうしたの、翔?」
「聡…お前いつからそう呼ぶようになったんだよ」
機嫌が悪そうに見えるのは私だけだろうか。
「今さっき!」
聡君はそう言って私の肩を組んできた。
「離して」
「華夜ちゃん、怖いって」
彼は肩から腕を退けた。
こういう馴れ馴れしいのは好きじゃない。
これだから男は…。
「北山君と華夜、仲がいいね!」
嬉しそうに言った紗月。
別に仲良くはない。
ただ、名前を呼ぶようになっただけ。
それに、なんで嬉しそうなんだろう。
「そんなことより、カラオケに行くなら帰るから」
どうしても帰りたい私は、話を戻した。
えぇー!と言う紗月。
えぇー!じゃないから!
私はそういう場所に居たくないんだって!
紗月の頼みでもこれだけは嫌だ。