それでも好きだった
「え…」
突然聡君から出た彼の名前に反応する。
「なんで…?」
どうして分かったんだろう。
それにどうして彼だと思ったんだろう。
聡君の目は真っ直ぐ、私を見ていた。
見透かされているようで、目を逸らしてしまう。
「俺さ、見たんだ。この前、翔と華夜ちゃんが二人で歩いているところ」
きっと、あの次の駅まで歩いて行った日の事だろう。
それ以外でも何回かあったけど、きっとその日の事だと思う。
一緒に歩いていたのはその日だけだったから…。
まさか、見られていたなんて…。
でも、何かをしていたわけじゃなくて、途中まで送ってくれただけ。
やましい事なんて一つもない。