愛しいキミへ



女の人と腕を絡ませて、楽しそうに歩く姿。


私の中で何かが壊れ、目の前が真っ暗になった。


渚がモテる事くらい分かってた。


告白されてる所だって、何度も見た。


でも、「好きなのは椎だけだ。」
って言ってくれてた。


何度告白されても、必ずそう言って断ってくれた。


だから、信じられた。


その分、裏切られた時の悲しみは大きかったんだ。









「椎ー、椎ー、」


「……。」


「椎っ!!」


「……は、はいっ」



今、すっごいボーッとしてた。



「どうしたんだよ、ボーッとつったって。」


「ちょっと考え事を……」



渚のことだって言ったら、また心配させちゃうよね。

黙っとこ。



「……椎、全然関係なかったら悪いんだけどさ。」


「何?」


「もしかして、……渚のこと?」



バレバレじゃん。

だけど、冷静にね。
平常心で……



「違うよ?全く関係ないから。」



精一杯の笑顔で言った。

でも、隠せなかったみたい。











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