愛しいキミへ
「そりゃ、そうだよな。」
俺は椎凪の強がりに、全く気づいてやれなかった。
あんな事があって、普通にしてられるわけないよな。
授業にも出て、部活にも出て……
それに、天宮が退学になった、ってのも聞いたみたいだし。
「ごめん。」
椎凪をそっと抱き締めた。
すると……
「や、ッッ……」
突き飛ばされてしまった。
「椎凪…?」
「ごめん、ごめんなさい…ッッ。」
震えながら、椎凪は謝った。
自分で自分の体を抱き締めるようにして、両腕を握った。
「いや、俺の方こそ…」
「ごめん…ッッ。私、まだ恐いの。男の人に触られるのが……、恐いの、、、」
俺は、こんなに弱った椎凪を見たことがあるだろうか。
この短期間で、いろいろな椎凪を知った。
けど、決して弱いところだけは見せなかった。