愛しいキミへ
「もう!私、帰るよ。椎の所行ってくる。」
「ちょちょちょちょ、遥っ!!待てって、もうHR始まるぞ。」
「いいよ、別に。私にとっては、親友の方が大事です!!」
机にさげてあった鞄を持って、帰ろうとした遥を、必死で止める慎。
そこに、八重先生……改め、やっちゃんが教室に入ってきた。
「おーい、遥。どこ行く気だ?」
やっちゃんは、教壇に両手をついて言った。
てか、遥って呼んだ。
やっちゃん…、遥って呼んだ…
「やっちゃん、遥って呼ぶなよ~!!俺の遥なんだから。」
慎が帰ろうとしてる遥の腕を、必死に掴みながら言った。
「はい、はい。とにかく慎と遥は座れ。」
やっちゃんは手元の手帳を見ながら、面倒くさそうに言った。
慎と遥は仕方なく座り、それからHRが始まった。
でも、俺の耳には何も聞こえてこなかった。
頭の中は、遥に言われた椎凪の事でいっぱいだ。
椎凪の泣き顔や悲しい顔、寂しい顔。
そればかりが、頭にちらつく。
椎凪のそんな顔は見たくない。
いつでも笑っていてほしい。
笑顔でいてほしい。