愛しいキミへ
「慎、ババアって誰だよ。」
慎の部屋まで来て、着替えてる後ろから話しかける。
「お前知らねえの?無断で欠席すると、ガミガミ怒るババア。」
慎は振り返って、信じられないとでも言うような顔をする。
有名だぞ?と、最後に付け足して。
「転校してきたばっかだし…、知らねえよ。」
壁にもたれて腕を組み、言った。
てか、マジで知らねえもん。
会ったこともない、聞いたこともない。
初耳……
「その顔は、本当に知らないみたいだな。」
「何で疑ったんだよ…、嘘つく必要がないだろ?」
「ん、まあな。しかし……。ババアを知らないヤツが、この世に存在したとはな。」
「当たり前だろっ!知ってるヤツの方が少ねえよ、きっと。」
この世に存在したとはな、って。
山ほどいるぞ?
知らないヤツは…
俺だけ、みたいな言い方だ。
どんだけ有名なんだよ、そのババア……