人はそれを恋と呼ぶ
「あ、入ってきちゃったよ」
舞の呟きが聞こえたと同時に、集団の男達が店に入ってくるのが見えた。
「約束したべ?悠斗のおごりな!」
「俺、金ねーもん」
「雅也んち、ジュース何あんの?」
「あー、コーラならあったはずだけど?」
ドヤドヤという言葉がピッタリな感じで入って来た集団を見て、あたしはつい、店の奥に引っ込んだ。
「ちょ、由紀!?あんた何やってんの?」
「…品出しするんだもん」
「…もう!」
舞が何か文句を言ってる声が聞こえたけど気持ちよくスルーしたあたし。
賑やかなのは苦手。
男の子も苦手。
万が一にも話し掛けられるのは苦痛だ。
あたしは裏の倉庫にいたのに、この時たくさんの人が話してる中で、
たった一人の声を聞き分けられた事を今でも不思議に思う。
「…ちぇ。骨型クッキー老犬用って売切れかぁ…」