人はそれを恋と呼ぶ
あっさりと会計を済ませて出ていく集団を茫然と見送ってしまった。
いなかった。彼の声が聞こえなくて、最後まで耳を澄ましたけど、多分いなかったか、喋ってなかった。
…会えなかった。
「由紀?お前本当に代わんなくていいのか?」
貴兄ちゃんの声に、無言で頷いた。
「…変な奴。お前いつも店番嫌がってんじゃねぇか。俺、部屋にいるから、気が変わったら声かけろよ」
本当に変だ、あたし。
なんでこんなに必死になってるんだろ。
なんでこんなに悲しい気持ちになるんだろ。
お店の自動ドアが開いて、一人の男の子が店内に向かって声をかけた。
「優太ー!おせーぞ!?置いてくからな!」