人はそれを恋と呼ぶ


「…すいませんでした。いつも勝手に餌なんかやって…」


開けっ放しの窓から聞こえる久しぶりに聞く声。


ドキドキしながら、窓際の壁に背中をつけてうずくまる。


まだ少しだけ明るい空を見て、あたしには外を覗く勇気はなかったから。


外の気配に耳を澄ませる。


最後かも知れない彼の声を。


こんなにもあたしの胸に響く、彼の優しい声を聞き逃さないように。


「そうですか…もう、明日にはいなくなっちゃうんだな…じーさん…。いや、ポチだっけ」


「はは、確かにコイツじじぃだからなー。じーさんでいーよ」


< 130 / 165 >

この作品をシェア

pagetop