人はそれを恋と呼ぶ
川嶋 葵(カワシマ アオイ)はクラスでも結構人気がある、ちっちゃくて大人しい感じの子だ。
確か、川嶋とケンタは中学も同じって聞いてた。
「葵は俺の事、友達としか思ってねぇけどな…」
その表情は今まで見た事もないような顔で、俺は息をのむ。
こんな風に、誰かが好きな人を想う顔は、人を引き付けるものなのか。
「お前…振られたのか?」
「いや、まだ告ってもねぇし。優太に言われたくねぇな」
「どういう意味だよ!でも、お前ら仲いいじゃん。絶対大丈夫だと思うぞ!言わなきゃ始まんねぇだろ?早く告っちまえよ。俺が保証するし!」
何か悩んでる感じのケンタに、俺は余計なお世話と思えるような励ましの言葉を並べた。
「大事過ぎて、失いたくなくて、言えない想いってあるんだ。そんなに簡単に言葉に出来ない事ってあるんだ…」
植田と同じような台詞に、少し彼女の気持ちを重ねた。
アイツもそうだったんだろうか。
「本当に、優太っていい奴だよな。植田がお前を選んだ理由がなんとなくわかるよ」
そう言って、おかしそうにケンタは笑った。