人はそれを恋と呼ぶ
陸がこっそりと俺に耳打ちした。
「…マジで?」
俺が固まってると、拓が植田の部屋らしきドアを乱暴にたたいた。
「由紀ー!客が来てんだけど!上がってもらっていいか?」
部屋の中から聞こえる、植田の不機嫌な声。
「…えー誰?今日誰にも会いたくないから帰ってもらってよ…」
「いいのか?せっかく来てくれたのに。ひでぇな、由紀」
「だから誰?後でメールしとくから…」
「ゆーちゃんだと思うけど。初めて会ったから自信ねぇけど」
やや沈黙の後、ドアのすぐそばから声がした。
「嘘…だよね?」
「んーそう思うならいいよ。帰ってもらうし」
「だ、駄目!帰らしちゃ駄目!嫌ー!あたしすっぴん!やばい、ジャージなんてダサいし!ちょ、ちょっと待ってもらって!帰らしたら、拓、一生恨むからね!」