人はそれを恋と呼ぶ
「何だよ、木下って。由紀はいっつも『ゆーちゃん』て呼んでるじゃんかー」
拓のからかう声が廊下に響く。いつの間にか陸までいて、ニヤニヤ笑う。
「いつも言ってるんだぜー?今日はゆーちゃんが数学の時間寝てたとか、昼休みにバスケやってて超かっこよかったとかー」
植田は固まったまま俺の様子を見ていたが、はっと我に返ってドアを閉めようとした。
「…無理!今無理!ちょっと待ってて…!」
拓が片足をドアに挟んでこじ開ける。
「諦めろって!言っとくけど貴兄が寄こしたんだからな!ゆーちゃんが素の由紀に幻滅するような奴だったら、全力で反対するんだってよー」
「はぁ!?よ、余計な事を!嫌よ!幻滅されるに決まってるじゃない!
無理!お願いドア閉めて!」