人はそれを恋と呼ぶ


「せっかく…必死で勉強して同じ高校に入ったのに、偶然同じクラスで、飛び上がる位嬉しかった。なのに…あたし、周りがみんな木下に話しかけてるのにどうしても出来なくて。休み時間になるたびに同じ教室の中にいることすら緊張して、逃げるように廊下に出たりしてた。

あたし達、一回も目すらあったことなかったんだ。だから…木下に同じクラスだって事さえも認識してもらえてなかった。すごくショックだった」


「……!!ごめん、それは俺が悪いんだ、由紀のせいじゃない…」


口を挟んだ俺に、由紀は首を横に振る。


「あたし…木下にあの時『付き合ってる振りをして』って頼んだのは、チャンスが欲しかったの。このままじゃ絶対好きになってもらえないって思ったから…。好きになって欲しかった。でも、全然うまくアピール出来なくて…」


もう彼女が何を言いたいのか、目を見てるだけで伝わってきた。


「あたし…ずっと木下の事…」


由紀がそう言いかけた時、俺は由紀を強く抱きしめた。


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