パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~
第1章 サクラ色の日常
―サクラひらひら…―
「………七海………七海…どこだよ……七海…」
奈桜(なお)は暗闇の中、必死に手を伸ばす。
あと少し…もう少し…
何となく見えるその後ろ姿が振り返りかけた…
「七海………」
あともう少し……
「…起きて!起きてって!」
「う…ん……」
柔らかい布団に包まれた身体はまだほとんど動こうとしない。
寝癖がついて少しハネた茶色い髪。
気持ち良さそうに閉じた瞼。
上唇より厚い下唇。
下唇の方が厚い人は与える愛より与えられる愛が大きい人。
小顔で、細身の体つきは布団の膨らみからも分かる。
(まだ目を開けたく…ナイ)
「鳴ってる!!携帯!!…鳴ってるよ。……パパ!!」
キティちゃんのカワイイ枕に顔を埋めていた目元が、ピクッと動いて反応した。
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