パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~
「話になんない」


七海はそっぽを向いて仁王立ちする。
奈桜は深いため息をつくと少ない星を見上げた。
しばらく嫌な沈黙が流れた。
最初に口を開いたのは負けず嫌いな七海。


「桜は私が育てるわ。だから残念だけど奈桜の思うようには行かないわ」


「桜は渡さない」


「女の子には母親が必要よ。男の奈桜には桜を育てられない!」


「育てられるよ。オレは父親だ」


元々、優しい雰囲気の顔がいつの間にか父性愛に溢れている。
自信に満ちたその口調に、七海は驚いた。


「でも、桜を産んだのは私よ。私に選ぶ権利があるはずよ!」


「今育ててるのはオレだ。オレは何があっても桜を手放すつもりはない」


七海の顔がまた怒りで満ちて来る。


「たかが2年ぽっち育てたくらいで偉そうな事言わないで!中途半端な父親面がムカつくのよ!!」


『お前が言うな!』と、言いたい気持ちを奈桜はグッとこらえた。
この話はどこまで行っても平行線。
七海が桜を利用しようとしている限り、奈桜は頭を縦に振る気も話を聞くつもりもなかった。
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