パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~
「そっか?ならいいんだけどな。無理すんなって言いたいけど、今のオレ達のスケジュールだと…な?無理しないと無理だもんな。でも…体壊してるなら別だからな」


「ありがとう。大丈夫だよ」


正直、最近の隠されたスキャンダルに奈桜の精神はかなり参っていた。
顔色の悪さに表れるのは当然だろう。
睡眠もほとんど取れてはいない。


最後の…決断に時間がかかっていたから…。


「今度さ、メンバーみんなでうちに来ない?」


奈桜がスポーツドリンクの缶を見つめながら言った。
それは奈桜の中では心臓が飛び出しそうなほど、勇気のいる発言だった。
なぜなら…
家の中のあちこちに桜の匂いがある。
とても独身とは思えない空間が広がっている。


奈桜はひとつの大きな決断を下していた。



「えっ!?いいの?奈桜って絶対家に呼ばない人だったよね?」


泉は驚いて奈桜を見る。
今までどんなにみんなが言っても、絶対に家に入れてくれなかった。
頑なほどに。


「夜景が綺麗だから。夜景が綺麗に撮れるカメラ、持って来いよ」


その笑顔は何か吹っ切れたように爽やかだった。
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