パパはアイドル♪ ～奈桜ｸﾝの憂鬱～
「奈桜さん、どうかしたんですか？」


ちょっとイラッとしたのか石田の運転が少し荒れて、赤に変わった信号を加速して突っ切った。


「いや…、あの…、オレは基本的に仕事を選べる立場じゃないってそれは分かってる。その上でさ、ちょっとやってみたい仕事があって…。今のうちに色々やってみたいんだよね。若いうちにバンバン仕事しておきたいし。どこまでやれるか自分を試す？みたいな」


奈桜はあくまでも自分の考えであるように、遠慮しながら…それでもやりたい意思を伝える。


「私の取って来る仕事では不満ですか？これでも奈桜さんのイメージを大切に、なおかつ、新しい魅力を引き出せるような仕事を選んで、時には売り込んで、私なりに最大限に頑張っているつもりです。今や国民的アイドル、Ｚの奈桜さんですから、仕事のオファーも実際多いんです。その中で事務所と相談しつつ私が選んで来た仕事では足りないと言う事ですね？」


車の速度が明らかに速くなっている。
話がずいぶん逸れてしまった事に奈桜は焦り出した。
仕事場に着く前に何とか話を進ませたかったのだ。


「誰もそんな事言ってないよ。石田さんには感謝してるって。石田さんのおかげでラジオの仕事ももらったし。ドラマだって。Ｚならまだしも、オレ単独で仕事がある事にほんと感謝してる。全部石田さんのおかげだよ」


奈桜はなだめるように優しい口調で話す。
それは本当に感謝しているから。
< 168 / 337 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop