パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~
が、一瞬早く、神川の手が桜の左手を掴んだ。


「お嬢ちゃん、覚えてるかな?前に1度会ったよね?ほら、公園で。おじさん達、Zの撮影してて。あの時はいきなりでびっくりさせちゃってごめんね。でね、お嬢ちゃん、とってもカワイイからみんなが気に入っちゃってね。是非、写真を撮らせて欲しいんだなぁ。Zのアルバムにね、使いたいんだよね」


子供嫌いな神川も自分の欲の為ならここまで優しい顔になるのか?というくらい、笑顔で桜の目の高さにかがんで話し掛ける。
欲望とは時に汚い。


「やめて下さい!警察呼びますよ。写真なんか撮らせませんから!!結構です!」


優子は声を荒げて桜の手を引っ張った。


「Z!?Zに会えるの!?」


桜の目が輝いて優子の手を振り解く。


「桜!」


「そうだよ。Zだよ。お嬢ちゃん、Z好きなの?」


神川の唇が一瞬、ニヤッとした。


「私、知らないの。だから見てみたい」


「桜!行きましょう。知らない人と喋っちゃダメって保育園の先生にも言われてるでしょ?」


明らかに怒りに満ちた優子の顔に、神川は確信を得て行く。
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