愛のため息
タカちゃんはその間ほぼ無言だった。



話を振られたときに『うん』とか『そうだね』って相槌を返すだけ。




そのタカちゃんが『トイレ』と言って席を外すと、村田さんは眉を下げてはぁっとため息。落ち込んでるみたい。




『まだ怒ってんのかなぁ。もう一度しっかり謝るべきか?謝るべきだよな』




多分独り言なんだろうけど、その割にはデカイ声で呟き、タカちゃんの後を追うように席を立った。




口調はいつも通りだからもう怒ってないんだと思う。



怒ってるというよりもあれは……




『ミイちゃん聞いてたかな?』




その声にハッとして俯きがちになってた顔をあげると、稲垣さんがミイを見ていた。





「あ、ごめんなさいボーッとしてました。もう一回言ってもらえますか?」





背を伸ばして手を膝の上に置いて尋ねたら、稲垣さんは困ったように笑う。





『そんなかしこまらないでいいのよ?もっとリラックスして。ね?』




そう言われても。




タカちゃんと同じ会社の人って聞かされてるし、ある程度行儀よくしなきゃ…ね。




そう思ったから曖昧に笑ってごまかした。






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