朝日と夕日のラプソディ
「あれ?そうだったっけ…なんか記憶が…あっ!あーあーわかったあのときね!そーそー思い出した。あのときだ。何気なく言ったことが人を救うこともあるんだなー。ふはははは」

言ってねーよ。言ってねー。確実にそんなことは言ってねーよ。なんせその日は影法師さんに会ってない。家族で網走ビールを飲みに網走に行ってたから。ということは4月21日午後1時52分に教室で影法師さんは悪魔と契約をして、魔術に魅せられたんだ。何がどうしてそうなってしまったんだろう。今の世の中、ビッチしかいないに等しいのに影法師さんのようなピュアガールは珍しい。そして何より影法師さんは誰かに対して何らかの感情を抱くことはない。そうだ、影法師さんは平成のピュアガールにして平成のサイコパスなのだ。だからあの人を振り向かせたいとか、あの人が憎いからとか、そういうことに魔術は使いたいと思わないはずだ。いや、違う。平成のピュアガールにして平成のサイコパスだからこそ、悪魔は目をつけたのではないか。悪魔や魔術のことはよくわからないが、なんだかこれ以上に悪魔や魔術に好まれそうな人間もいない気がしてきた。ということは悪魔に寵愛されるべくして産まれた女なのだ。影法師さんは。
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