朝日と夕日のラプソディ
「ご、ごめんね…こっちだった…」

下手な演技でごまかす影法師さんに苛立ちを覚える。ストレートで勝負せんかい!ストライクに投げんかい!キンタマついとんのか!新たに差し出された手の平にはチェルシーが乗っていた。生憎、僕の好物だったため、心の隙間に突如として現れた清原和博はパッとその姿を消した。2軍に落とされたと思われる。心の隙間とはいらないようでいる。いや、やっぱりいらない。何故、僕の内部に清原ごときが付け入る隙がある。どうして苛立ちの象徴が清原なんだ。あぁ、なんと貧困なイマジネーション。なんと安易な心の隙間。感情を実在する人物で具現化だなんて、脳みそが腐っていく。これからは苛立ちの象徴はメラゾーマにしなければ。

「ビー玉どうしよ…」

早くチェルシーが食べたい。焦りから影法師さんに処理の仕方を尋ねてしまったのが間違いでした。影法師さんはぐんぐん僕に顔を近付け、そのままぶちゅーと薄めで小さい唇を押し付けたかと思うと、間髪入れず舌を捩込み、水を得た魚のように僕の口の中を器用に動いて、ビー玉をさらいとっていった。唇が離れるとその見事な秘技にアホ面でっていうかいつもたいていアホ面だけど、とにかくいつもの5億倍くらいのアホ面で拍手をせざるを得なかった。

あぁ、はじめてのチュー。きみとチュー。
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