泣かないで!
第一章 終りか始まりか


そこは
静かな住宅街の一室。
深夜と呼ぶべきか
夜明けと呼ぶべきか
そんな時刻。

室にはパソコンの
青白い光が一つ。
チカチカと、
時に色を変えながら、
一人の人物を暗闇の中に浮かび上がらせていた。

その人物は、
この部屋の主。

新城 優
(しんじょう すぐる)21歳。


職業 無職


所謂ニートだ。


光に負けない程青白い肌
だらし無く伸びたヒゲ
光に映る瞳には、
光はない。
全てを諦めたような眼には、ただパソコンの画面が写っているだけ。


「コンプリート」


小さく呟き、キーを指で叩く。


それは
マジカルオンライン。
ネットゲームの一つ。


ほぼ引きこもりな優の
唯一の社交場
唯一の日課。


毎日、
寝て、
食べて、
ゲームして
寝る。


そんな日常。


今日もいつものように
長時間パソコンの前に座り、画面を見つめ
一心不乱にキーを叩いていた。


『今日も1日乙
オラはそろそろ寝オチ』


そんな文面を打ち込み
ネット世界の仲間に挨拶し、パソコンをシャットダウンする。


これで、優の一日が終わるのだ。


時計を見れば、もう夜明けと言ったほうが近い時間。


優はつけっぱなしにして短くなった煙草を一吸いしてから消すと、
立ち上がり伸びをした。


パソコンに集中していた数秒前は眠気など微塵も感じなかったのに
パソコンをシャットダウンしたとたん襲う眠気。

どれだけ集中していたのだろう

だがそれも何時ものこと


そのままベッドに潜り込み、瞼を綴じた。


 
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