泣かないで!

気が付けばどのくらいそうして居たのか

足の裏がコンクリートに冷やされ痛みすら感じる

そして、我に返って札を拾う姿はなんて惨めなんだろうと思う。

さらに、
状況が状況だけど
あんなに高らかと
“働いていない”とか
口にする俺は
もう終わってるんだろうな。

いや、それ以前に終わってるや。

そうごちり自嘲した。

集めた札は
数えたら
7万3千円だっだ。

今時の大学生って
金持ちなのかな

どこか呑気な事を考えつつ、部屋に戻る優。

自宅のドアを開け
暫く固まる。

部屋の中にいる
生き物と目が合い
まるで対峙するように
暫しお互い見つめあった
なんだか時間が止まってしまったようにも思える

「あ―」

そしてその時間は
相手が声をあげた事により、再び動きだす。

…起きてる。

一樹は籠から出てテーブルに掴まり、立ち上がっていた。

「…やあ」

とりあえず、引き攣った笑いで手を振ってみる

しかし一樹は気に入らなかったのか視線そらした。

どうやらテーブルの上に置いてあるテレビのリモコンが気になりだしたらしい。

優は様子を伺いながら部屋に入ると
テーブルを挟んで一樹の反対側に腰を下ろした。

そして観察するように一樹を見る。

一樹は小さな手でリモコンを掴むと、自分のもとに手繰り寄せる。

その動きでバランスを崩したのか
リモコンが手元にきたとき、ペタンと一樹は尻餅をついた。

「あーにゃ」

独り言のように口にし
リモコンのボタンを押す一樹。

「テレビ観たいのか?」

その様子に優も話しかけてみる。



優を見ようともしない。

「だーだーあー」

ただリモコンのボタンを触ったり押したりしながら、何か喋っていた。

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